西洋では中世以降、セックスはたえず罪や羞恥に苛まれつつ描かれてきたといえます。東洋ではおおむね、セックスがやましさなく率直に表現されてきたのとはじつに対照的です。
それはキリスト教の禁欲的な性道徳の影響によるものです。このキリスト教の影響はどんなに強調しても強調しすぎることはありません。肉欲と格闘した初期キリスト教の神学者たちは、セックスを原罪と結びつけ、穢れたものとして抑圧しました。唯一許容されたのは、子作りを目的とする夫婦間のセックスだけでした。そうした禁欲的な教えが正統説として採用され、西洋社会に浸透したのです。
そのため、快楽としてのセックスを描くなどというのは、むろんご法度でありました。しかし、そんな絵を見たい、描きたい、というのが古今東西を問わず人性の常。
では、いかにタブーをかいくぐるか。そのために、描き手はじつにさまざまな口実や偽装や隠蔽を施してきました。じつは、こうした屈折や鬱積ぶりこそ、西洋の性愛イメージの最大の見所であるといえます。
本サイトでは、西洋世界で紡ぎだされた性愛のイメージについて、それぞれの時代の特色や、おもな芸術家たちの作例など、西洋のエロティック・アートの奥深い魅力を紹介していきたいと思います(順次コンテンツ追加予定)。