ルネサンスは古代ギリシア・ローマのおおらかな性愛芸術が復活した時代とされています。しかし、カトリック教会の権威が揺らぎ始めたとはいえ、禁欲的な性道徳は依然として社会に根強く浸透していました。
そのため、画家たちは一計を案じました。古代神話や聖書を題材として性愛を描くことにしたのです。神様のセックスや、女神のはだかや、聖書のありがたいお話しの絵解きであれば、エッチな場面でも大義名分が立つというものです。
こうした題材が、往々にして性愛を描くためのたんなる口実でしかなかったのは、いうまでもありません。これは近代まで引き継がれる暗黙の約束事となりました。
1525年、一冊の画集がローマで出版されて一大スキャンダルを引き起こしました。16のセックス体位が描かれた「イ・モーディ」(I Modi)です。もっぱら性の快楽のために描かれた、いわゆるポルノ画の登場です。神々の愛に仮託していましたが、描写が生々しすぎました。
それ以降、この手のポルノを限られた仲間内で回し見して楽しむという慣習が生まれました。王侯貴族が自分の愛人のヌードを女神に模してプライベートで描かせるのも流行りました。ただし、それはあくまでも一握りの特権階級だけに許された贅沢な趣味だったことを忘れてはなりません。