十八世紀フランス・ロココ美術を代表する芸術家の一人。当代一の流行画家で、ポンパドゥール侯爵夫人の寵愛を受け、神話画、肖像画、風俗画から、タピスリーや磁器の下絵、オペラの舞台装飾、ドレスや扇などのデザインにいたるまで、幅広いジャンルで活動した。
《ディアナの休息》(1742)、《ウルカヌスに捕らえられたウェヌスとマルス》(1754)など、ブーシェの描く女神たちはじつに肉感的である。《ソファに横たわる裸婦》(1752)を初めとする風俗的な裸婦像には、それがいっそう当てはまる。そのため道徳的な嫌悪感をも惹起し、啓蒙思想家のディドロらから卑猥で不謹慎との非難を浴びた。さらに、ブーシェ作と伝えられる幻の秘画の存在も伝えられている。