フランスの素描画家。
40歳を過ぎて独学で絵を始め、もっぱら素描と水彩に取り組む。自分の名が知られるのをひどく嫌い、どのデッサンにも著名を入れなかったのは有名な逸話。作家ボードレールから「近代生活の画家」として称賛されたように、第二帝政時代(1852~70)の一時的で移ろいやすく刻々と変貌を遂げる市民生活をあるがままに記録した。その意味で、クールベら写実主義の先駆をなしたといえる。
ギースのお好みの主題は女性と軍隊と馬であり、なかでも女性にはもっとも熱心に取り組んだ。彼は花柳界の女たちをくり返し描き、それによってもっとも成功を収めた。
彼の描く女性はみな娼婦特有の香気を発する。男を魅了し愛欲へと誘う職業的オーラをまとっている。パリの娼婦の年代記作者として、ギースは後世のドガやトゥールーズ=ロートレックに影響を与えたといえる。