フランスの画家、石版画家。
画家一族の出身で、風俗画や歴史画や同時代の名士の肖像画を得意とした。市民王ルイ・フィリップ治下の七月王政期(1830~48)に、人気風俗画家として持てはやされるいっぽう、裏の世界ではライバルのドヴェリアと同じく好色石版画を量産。
モランは好色版画を手がける際、ロココの艶情版画家たちに倣い、二重版画の手口を使った。つまり、いっぽうは一般の市場で売買される良風美俗に適った版画で、もういっぽうはそれが節度で覆われる前の赤裸々な版画というふうに、一つの作品を二とおりに作った。むろん、当局の目をくらますためである。
『ヴィー・アン・ローズ』誌の巻頭を飾った女性ヌードで裁判沙汰に巻き込まれるようなこともあったが、検閲にひるむことなく闇の市場に好色画を供給し続けた。