イカール、ルイ Icart, Louis 1888~1950

 フランスの画家、版画家。

 アール・ヌーボーからアール・デコの時代にわたり、ポストカード、服飾デザイン画、ファッション誌の挿絵、ポスター画、それに豪華本の艶書の挿絵にいたる幅広い分野で活動。

 しかしテーマは一貫して女性であり、小粋なパリジェンヌを活写したファッショナブルな美人画にもっぱら取り組む。それらには、最愛の妻ファニーの面影が陰に陽にうかがえる。

 また、ロココ趣味を想わせるその優美で愛らしい女性の裸体は、生身の肉体というより一種のデザインと化している。この肉体の意図的なデザイン化が、イカールの大きな特色といえる。

 イカールは母国やアメリカで商業的に成功を収めて富も名声も手にしたのちに、一般にはあまり知られていないが、限定出版の豪華本にエロティックな挿絵を提供した。そうした挿絵本は、クレビヨン・フィス『ソファ』(1935)をはじめ、現在のところ全部で20冊以上確認されている。それらには、彼の通常の美人画の一線を越えた、きわどい艶画が散見される。

 

 

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