20世紀 Erotic Art in the 20th Century

 20世紀には、伝統的な価値観がますます揺らぎ、人々の性意識はおおむね抑圧から解放へと向かいました。

 とくに1960年代から70年代にかけて欧米では、性意識の著しい変化が見られ、この時期エロティック・アートは、反戦、表現の自由、フリー・セックスのような政治的、社会的信条と結びついて著しい盛りあがりを見せました。

 人々の性意識の解放は、芸術家による表現の自由を増大させ、アートとポルノの垣根、アカデミズムとアンダーグランドの境目をあいまいにしました。

 しかし、その結果として、タブーの意識が薄れ、性のイメージが持っていた強烈なインパクトを失わせる結果ともなりました。そうしたなか、作り手はますますプライベートな欲望へ、倒錯した欲望へと向かうことになりました。

 20世紀は、有史以来もっとも大量に性のイメージが生みだされるとともに、過去の性イメージがもっとも盛んに再生産された時代であるといえます。

 表現手段としては、絵画、素描、版画、彫刻のような伝統的手段から、写真へ、そして映像へとシフトしていきました。

 そのいっぽうで、大量生産、大量消費の市場機構がいっそう整えられ、いまやセックスのイメージは、経済活動と深く結びつき、人々の欲望を煽り立てることで成長する資本主義社会において、作品という枠組みを超えて、無意識の欲動を刺激する技術として、あらゆるメディアに取り込まれています。

 20世紀の性表現の画期的な出来事の一つ、それは女性解放運動、ゲイ解放運動の高まりとともに、フェミニズム・アートとゲイ・アートが登場したことです。

 フェミニズム・アートはそれまでのアートが作り手にしても鑑賞者にしても男性中心であったことに異を唱えました。そして、男性から見た女性のセクシュアリティではなく、女性みずからが見た女性のセクシュアリティ、または女性から見た男性のセクシュアリティを表現してみせました。

 いっぽうゲイ・アートは同性愛者のセクシュアリティをはばかりなく表現し、それまでの異性愛中心主義を相対化してみせました。

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